・自然災害による交通網ストップに要注意
・空港前日入りの費用は出ないが、するのも手
・勤務先に赴任するまでは割とゆっくり過ごせる
日本から任国は原則、成田空港から出発する。これが意外とやっかいだ。例えば大阪に住んでいる人は関空に行けば成田と変わらないぐらい多くの国に行くことが出来るが、任国への赴任は居住地に関係なく原則成田空港から出国するため国内移動が必要となる。移動にあたり前泊が必要な方(遠方在住の方)はホテル代+航空券代も出るので問題ないと思っていた。しかし私が出国する日は天候不良の影響で当日移動となっていた中国四国地方に住んでいた隊員が成田空港になかなか来れず大変だったというエピソードを聞いた。新幹線も停電や事故により半日程度、運行を中止する場合があるため100%の信頼という訳にはいかない。よほど空港から離れた場所に居住していない限り前入り費用の補助はないが、台風シーズンや冬季はリスク回避を兼ねて観光がてら前入りするのも手だと思う。
空港には同期隊員がいる場合がほとんどだが、JICA職員は来ない。成田空港にはJICAのデスクがあるが、私が出国した22時頃には既に誰も居らず「出国日ぐらいトラブル対応のために居てくれたらいいのに・・」とお役所仕事ぶりにため息が出たものだ。利用する航空会社は任国まで行ける航空会社の中で最も信頼できる会社の航空券を手配してくれるので安心である。時折任国到着後の出国審査や税関で隊員にいちゃもんをつけ賄賂を要求する職員がいるので、出国前からワッツアップなどで現地職員(多くの場合はVC:企画調整員 簡単に言うと事務所における隊員の上司)の番号を登録しておくと良い。必要のない予防接種証明書が必要と言ってきたり、持ち込み可能な物を不可と言い賄賂を要求してきた事例は少なくない。
任国に到着した後はすでに現地事務所のスタッフが空港で待機しており、宿泊するホテルあるいはドミトリーまで移動することになる。調整員と呼ばれる方と現地JICA事務所の運転手が迎えに来てくれる。途上国の空港出口には大抵の場合良からぬ人々が溜まっており、物乞い、ぼったくりタクシー運転手、勝手に荷物を運んでチップを要求してくる奴などがウロウロしている。アフリカでは黒人以外が目立つため飛行機を降りた直後から気を張る必要がある。出口にて道を教えてくれたと思ったら教えた事に対してチップを要求してくるような輩も存在する。現地空港内で現地人に話しかけられた場合は明らかにスタッフである場合以外はガン無視を推奨する。
到着翌日から現地事務所での講習や、現地語学訓練などが開始となる。ここから勤務先に派遣される一カ月強はJICAが手配したホテルあるいはドミトリーに宿泊することになるが、安全面に配慮されてか比較的良いホテルを手配される場合が多いようだ。派遣国によっては隊員のみ利用するドミトリーに宿泊するようだが、この場合でもドミトリーとは名ばかりで日本でいうビジネスホテルと同様の施設がある宿泊施設になる。大まかな流れは以下になる。
赴任翌日:SIMカード購入、現地通貨両替、生活に必要な物品購入
赴任翌日に現地の大型ショッピングモールで上記の内容を済ませる。VCが同行するため分からない事があれば対応してもらえる。大きなトラブルはないと思う。後輩隊員には服をがっつり詰め込んだスーツケースの到着が遅れ、やむを得ず当面の衣料を購入した隊員もいたようだ。
赴任後1週目:現地事務所での講習、現地での銀行口座開設
現地事務所で任国の治安状況、政治、注意すべき点などを学習する。現地事務所には日本人以外の現地出身のスタッフが半数ほど働いており、治安や政治状況などは彼らから学習することになる。銀行口座開設もこの時期に行う。講習はおよそ9-16時で楽に思えるが、多くの隊員が時差や乾燥した空気、標高の違いに苦しむため体調を崩しやすい時期だ。ホテルから事務所の移動はこの赴任後一週間まではJICAが手配する車で、以降は隊員自身でウーバーなどを手配する。
赴任後2週目:現地語学学校で語学訓練
日本でも語学訓練を受けているが、任国でもう一度語学訓練を受ける。二本松や駒ヶ根で受ける授業と変わらないと思うかもしれないが、授業の質は日本よりかなり落ちる。講師がそれぞれ好き勝手、バラバラな内容を教えたり、授業開始時間より30分ほど遅れて授業を始めたりする。ここで真剣に語学を再学習したい方もいるだろうが過度の期待は禁物だ。私の場合、初日と中間日にテストがあったが、多くの場合語学学校で行われるテストは日本の訓練所時代と違って悪い点数を取っても特に問題はないようで、気楽に受けるのが良いだろう。
赴任後3週目:フィールドトリップ
これは赴任先に実際にバスなどを使って行き、赴任先にあいさつを済ませ入居する物件の目星を付ける事が目的だ。3泊4日で行われるケースが多いようだ。現地事務所は首都にあり、赴任先はバスで6時間掛かったり、遠すぎる場合は飛行機で移動する必要がある。多くの国ではCBD(Central business district)という非常に治安が悪い場所からほとんどのエリアへ乗合バス(ハイエースなどのバン)や長距離バスが出ている。事前に現地事務所のセキュリティオフィサー(現地の元警察官や軍人経験者)と共にCBDを見学したあとにフィールドトリップへ出発する。トリップ前には隊員自ら派先責任者とコンタクトを取る必要がある。ここで言語のクセが強くて会話が理解できなかったり、赴任先責任者が隊員が来ることを全く知らなかったりとアフリカ人やJICA事務所の適当さを感じ始める時期になる。赴任先へ到着した後は勤務先に挨拶をし、居住するアパートあるいは一軒家を探すことになる。教員隊員はここで「授業をやってくれ」と依頼されるケースが多いようだが、彼らはただ自分のコマを誰かにさせて楽をさせたいだけなので挨拶だけに留めると良いだろう。メインは住居探しになる。アフリカでは自分で見て歩いてアパートや一軒家を探す場合がほとんどで、大都市を除いて不動産による紹介は期待できない。JICA事務所は派遣先に「隊員が居住する住居の候補を見つけておいてほしい」と依頼しているようだが、必ずしも見つけておいてくれている訳ではなく、町を歩き回ってよい物件を探す必要がある。昼過ぎは静かでも夕方5-6時になると子供が走り回ってうるさかったり、夜になると近くにバーがあり騒がしくなったり、というケースもある。物件を探す際は候補物件の回りを夕方~夜にも近くを歩いてみてチェックしてほしい。田舎の場合はそもそも物件候補が一つしかない場合もある。
赴任後4週目:現地語学学校で語学訓練
フィールドトリップ後に再度一週間、語学訓練があるがもうここでは赴任先のこと、これからの仕事内容などでいっぱいでなかなか語学学習に身が入らない隊員も多い。私は学校の講師が誠実に授業をしてくれないため、昼食の時間を二時間ぐらいとっていた。授業時間になっても戻らなかったため、講師が電話を掛けてきたが「お前らだって授業開始時間になっても来ないクセに、俺が開始時間に居なくても文句を言うな」と突っぱねた事もある。今となっては子供のようだったと反省しているが、途上国での語学授業はこんなものだ。
赴任後5週目:任地へ派遣
語学訓練終了後、数日の講習があった後任地へ派遣される。この派遣はJICA事務所手配した車で移動し、遠い場所は飛行機で赴任する。赴任後は住居を正式に契約するまでホテルで過ごし住居契約後にそれぞれの住居で生活を始めることになる。 任国到着後から任地に派遣されるまではほとんどを首都で過ごし、同期隊員もいるため特に問題なく過ごせると思う。私の任国は標高が高いため、時差ボケより酸素濃度が低い事への順応が大変だった。一階から三階に上っただけで息切れがする、夜になかなか寝付けない、大して運動もしていないのに疲労感が強くて昼寝をしてしまう、などは同期隊員の多くが体験していたようだ。いずれも1-2週間ほどで順応出来るので大きな心配はいらない。