・最終的な倍率は3-5倍
・コミュニティ開発と青少年教育以外は要請数>応募者数である場合がほとんど
海外青年協力隊に応募する人は年々減っており、ピーク時と比べると近年は1/6ほどに落ち込んでいるようだ。現に2023年秋募集の選考結果を見ると要請数が約2000で応募者数は約1500人と選考前の段階で定員割れしている。最終的な倍率はおよそ3倍で、応募人数が少ないにも関わらずJICAが厳しく選考している事が分かる。ここでは海外青年協力隊の人気が落ちている要因を考えていく。
海外青年協力隊でなくても海外で働ける機会が増えた
かつては途上国で働くと言えば海外青年協力隊とイメージだったが、現在は国際NGOなどに所属し働く事も可能だ。海外勤務をあっせんしている求人サイトでは途上国に海外青年協力隊にて派遣されるより良い条件で働ける求人も多く掲載されている。ワーキングホリデーでは自分が選んだ国で働きながら語学を学習することも出来るため、海外青年協力隊が選ばれなくなっているのは自然な流れかもしれない。
待遇が良くない
民主党政権時代に事業仕分けされた影響で隊員の待遇は悪化している。平成8年度のデータと令和5年の待遇の差を以下に記している。
平成8年(1996) | 令和5年(2023) | |
現地生活費(1カ月の支給) 某アフリカ国 | 420ドル | 550ドル |
訓練期間中の支給 | 50000円(一カ月分) | 40000円(一か月分) |
訓練終了後から派遣日まで | 50000円(一カ月分) | 100000円(一カ月分) |
国内積み立て支給金 (任国派遣中) | 99700円(一か月分) | 55000円(一か月分) |
協力活動完了金(派遣期間終了後に振り込まれる手当) | なし | 20000円×活動月数 |
こうやって見てみるとあまり変わらないように思えるかもしれないが、平成8年と令和5年の二年間総支給額を計算(1ドル150円として)すると平成8年は約411万で令和5年は約358万となる。パッとみると国内支給積立金の減額が大きい。現地生活費は3割ほどしか増えていないが、近年価は周知の通りだ。途上国でもスーパーで買い物すれば日本とほぼ物価が変わらないにも関わらずに支給額があまり変わっていないのは辛い。実際、私が任国に住んでいた二年間で赴任当初は60円で売られていたパンが帰国直前には80円になっていた。他の製品も軒並み値上げしたが、二年間で現地生活費の支給額には一切変化が無かった。生活費は大まかにアフリカ>中南米>アジアとなっているが、アジアでは高価ながら日本製品が手に入りやすい、良いレストランが首都を中心に多くある事などから生活費がかさむ傾向にありアジア圏に派遣される隊員は贅沢が出来る環境に置かれながら節約を強いられると聞いている。
協力隊の実態がネットで知られるようになった
JICAはたびたび経験者などを呼んで説明会を開催したり、応募時期にはYouTubeにモデルを起用したCMを流したりとアピールに躍起だ。しかしその実態の多くはきらびやかなものとはかけ離れている。当ブログや他のブログでも紹介されているように「全然求められていなかった」「やりたい事をやろうとしても派遣先の上司に煙たい顔をされるばかり」「現地人からチャンチョンと呼ばれまくる」など、実際はひどいものだ。二年間強いストレスに曝されながら大した手当しか受け取れないのであれば日本でそのまま働いたり、良い給料を求めて米国や欧州などの先進国で働く事を選ぶ人が多くなるのは自然と言える。
協力隊活動を二年間全うした者は「二年間途上国で働くことが出来てよかった」とそれぞれの経験を美化している場合が多いが、私はその逆の人間だ。協力隊に参加せず、日本に残って働いたり先進国で働けば良い給料を得られた、スキルを身に着けられたのではと後悔している。私は別記事で書いているように語学力を身に付けたくて応募したが、オンラインレッスンなどが普及している今では仕事をしながら休みに真剣に学習すれば二年で相応の語学力を身に付けられたのでは、と自らの考えの甘さに後悔している。協力隊での活動は必ずしも個人を成長させるものにはなりえない。 現在の選考状況を見ると応募の条件が緩い(誰でも応募できる)コミュニティ開発と青少年教育以外の職種は健康診断さえクリアすれば選考通過は難しくない。応募者減の要因についてJICA側はコロナの影響が続いている、少子高齢化によって就労人口が減っている事が原因などと言っているようだが、待遇を何とかする事と隊員・派遣先のミスマッチを無くそうとしない限りは人は集まらないと見ている。これから案件に応募しようとしている方はメリットデメリットをよく考えて応募することをお勧めする。