・スーツケースに入れるものは要厳選
・役所手続きだけでなく身辺整理もすべき
訓練終了後は派遣国によって異なるが派遣までは1-2カ月の自由期間がある。この間に派遣国に行くまでの準備を進めることになるが、みなさんが気になるお金事情を先に紹介する。まず語学訓練終了後から派遣前日まで一カ月で約10万円支給される。(無職や休職で訓練参加した場合)一日3000円ほどの支給で出国日まで日割りで支給され、これは訓練終了後に収入を失った状態に対する補填となる。また派遣される国によって微妙に額が変わるが準備費用として約20万円支給される。これで派遣国に行くための準備を整えよ、ということだ。この20万円は派遣先に持ち込むであろう米国ドルに両替することになるケースがほとんどと思われる。
フォローアップレッスン
訓練所を退所してから一週間ほどで語学フォローアップとしてオンライン授業を任意で受ける事が出来る。この授業は講師も生徒も組み合わせは訓練所のままで、約10日ほど、9-12時、13-15時を目安に実施される。任国派遣の直前なのでしばらく会えないであろう友人と会ったり、アルバイトで少しでも稼ごうとする人、旅行する人もおりで参加率はまちまちだ。講師によっては「聞きたい事があったら言ってね、あとは自習で」という適当な講師も存在する。
表敬訪問
この時期には都道府県のJICA支部担当者と共に隊員出身都道府県の知事を表敬してあいさつをすることになる。東京や大阪などの大都市であれば複数の隊員で表敬するのでプレッシャーはないが、場合によっては隊員一人で表敬する場合もある。地域によるが、役所側より何らかの物品贈与があるためよほどの事情がなければ参加して損はない。筆者の場合、地域の特産品など買えば2万円ほどする物を頂いた。なお、この表敬訪問の後にはほぼ各都道府県のJICA支部よりお茶会や食事会、あるいは飲み会に誘われる。この会に参加して良い話を聞いた事がない(例:初対面の偉そうな人とずっと昔話に付き合わされた、盛り上がらない話を延々と聞かされた)のできっぱりと断るべきである。訓練終了後から派遣までの期間は家族やパートナー、友人たちとゆっくり過ごせる派遣前の貴重な期間だ。そういった貴重な時間を今後会う事のない初対面のうっとうしいおっさんやおばさんに費やす必要は無い。
役所手続き
役所手続きに関してはJICA側から住民票を抜くように言われるが、実は義務ではない。基本的には住民票を抜く事で派遣翌年における住民税免除のメリットが大きいため住民税を抜くことをおススメする。妻帯者などは社会保険料の支払い総額が変わるようで、お住まいの市町村に問い合わせると良いだろう。国民年金加入に関しても義務で無くなるため、金銭的に余裕のない方はリスクを受け入れて払わないのも手だ。1-2月に日本を出国される方は裏技になるが12月中に出国扱いで市役所に書類を提出することで翌年の住民税を払わずに済む。国保も抜けることになり、出国直前まで医療機関の受診が全額負担になるためそれぞれの健康状態に応じて調整すると良いだろう。
任国に持ち込む物について
任国へ何を持ち込むかは隊員の悩みのタネである。実際私も出国直前まで悩み、ドン・キホーテやドラッグストアに行き、要るものはないか何度も確認したものだ。人によっては読書のためのkindleだ!と言っていたり、やっぱり緑茶と味噌で日本の味を派遣先でも楽しみたい!などと千差万別である。ここでは私見を述べるが、一番大切なことは「派遣国の休日で日本と同じように過ごせる物を持っていく」、これに尽きる。発展途上国では基本的に電化製品や衣類は質が悪い上に値段が高く、そもそも手に入らない物もある。これを調べるためには派遣国にいる先輩隊員に話を聞くしかないが、そもそも途上国でも都会と田舎の差は激しい。日本で例えるなら熊本の八代駅前と東京の秋葉原駅前が全く違う様子であるのと同じだ。ここでは私が実際に持参した物品で持っていって良かったもの、要らなかったものを記しておく。
良かったもの
・プロジェクター
これはパソコンでユーチューブを見たり、映画を見る時に役立った。発展途上国では現地の人々や同期隊員と休日に外出したり、食事をしたりするイメージがあるかと思うが、この人間関係の煩わしさ(特に対現地人)に悩む隊員は多い。同期隊員は離れた場所に住んでいることが多く、週末に会うには少しせわしない。また発展途上国の人々は距離感が近く、土日に「家に遊びに行っていいか」「家に遊びに来いよ」などと頻回に誘われる。適度な頻度であれば良いが、毎週末そのような過ごし方をすることはストレスになる。ネットフリックスで映画やドラマを楽しむ隊員は多く、アマゾンで1万ほどの安価なモデルを持ち込んで損はない。途上国でも買えない事はないが、基本的に上位モデルしかなく高額なためだ。また任天堂switchを持ち込む隊員がおり、私も持ち込んだが正解だった。ソフトはダウンロード出来るし、プロジェクターと組み合わせれば大画面でゲームを楽しめる。途上国でswitchなんて..と思う方も居るだろうが、途上国の休日は日本のような娯楽が無く、想像以上に暇を持て余すものである。
・衣類
アフリカの衣類は品質の良い物は高額で、品質が悪いものはとことん安いが日本の古着なんて比にならないぐらいヨレた物程度である。問題なのは前者で「価格の割に質は大したことがない」ということだ。例えるならノースフェイス並みの価格で質はGU、といったところだ。大型ショッピングモールにはアディダスやナイキなどのブランド店があるが、日本と比べ種類が少ないし高い。一時帰国で日本に帰る予定のない方は上着~下着までをある程度持ち込んだほうが良い。ユニクロのチノパン、カッターシャツぐらいものでも十分と思う。靴に関して途上国は舗装されていない道路が多く、白い靴はすぐに土まみれになる。二年間履きつぶして捨てて帰るぐらいの気持ちで2~3足(ビジネス用革靴含む)を持っていくと良いだろう。綺麗な靴を職場に履いていくと同僚から妬まれるため、仕事の時はあえて汚い靴を履いていく隊員もいる。
・充電池(電池全般)
エネループなどの充電池は途上国では手に入り辛い。国によるが、私の任国では乾電池は高額で単三1本で50-100円ほどした。停電時のライトや電動歯ブラシ、置き時計など使う場面は多く単3・4を持参する家電製品に対応した分+予備分を持ち込むと良い。また、日本にあるような腕時計用のボタン電池は入手困難だ。派遣前に交換し、予備として腕時計の本数×2ほどあれば安心だ。モバイルバッテリーも同様の理由で質の良いブランド物を出国前に購入すると良い。停電が多い地域に住む方は複数持ち込んでも良い。私は劣化したバッテリーを持ってきてしまい、赴任して半年ほどで使い物にならなくなった。モバイルバッテリーは機内持ち込みで引っかかる可能性があるため持ち込み可能か必ず確認しておくべきだ。
・オーラルケア用品
途上国でもフロスやリステリンなどのケア用品は手に入るが、日本の1.5倍ほどの値段がするし種類も少ない。電動歯ブラシや日本で売られているようなきめ細やかな質の高い歯ブラシは入手困難だ。アフリカの歯ブラシはサイズがとても大きく、細かく磨きにくそうな印象だった。虫歯になると日本のように簡単に治療を受けられないため、こだわりがある方はある程度持参すると良い。ちなみに歯ブラシも低品質のくせに高く、100均レベルのものが250円ほどする。
・包丁と箸
アフリカにも包丁は売っているが、いかんせん質が低い。その割には値段も高く、売っている店が限られている箸と合わせて持参すると良い。百均で包丁研ぎを買っておけば二年間は問題なく使用できる。テフロン加工がされているフライパンや鍋はショッピングセンターに行けば売っているが高額なのでスーツケースの容量に余裕があれば入れても良い。ピーラーなどその他調理器具も日本で購入する方が安く、高品質である。
・文房具
これも上記の内容と同じく質が悪い割に高いため持参をお勧めする。最低限の筆記用具は持参するだろうが、アフリカでは日本の100均レベルのものが300円ぐらいするイメージだ。要請内容によっては使う頻度が少ないかもしれないがボールペン、シャーペン、消しゴムなど筆箱がパンパンになるぐらいに詰めて損はない。現地人に貸した際に返って来ず、どんどん無くなっていくパターンが多い。
・衛生用具
耳かき、爪切り、ピンセットなど。耳かきやピンセットはアフリカでは入手困難で、爪切りは外国製のものは1000円ぐらいし、綿棒はすぐに折れてしまい使いづらい。百均に売っているトラベルセット(小さなコーム、ハサミ、ピンセット)がかなり有効だ。
不要だったもの
・電源コード
アフリカではそれぞれのタイプに対応した100-240Vの延長コードが日本と変わらない値段で売っていた。現地では手に入りにくいと聞いていた私は日本から3本ほど持ち込んだが、これは不要だった。赴任直後の買い物で十分に間に合う。変換プラグもUSB端子が付いた複数国対応の物を一つ持参すれば十分である。
こうしてみると持ってきてよかった物ばかりになってしまった。何より強調したいのは「アフリカで物を買うと値段は高く低品質」ということだ。途上国は自国で生産する能力に欠け、食料品以外の多くを輸入に頼っているため、日本なら500円なのに任国だと2000円というケースが多い。本当に持ち込みたいものをすべて持ち込むのは困難だが、スーツケースのスペースを余らせるのはもったいない。途上国でも通販サイトは存在しており、地方都市ぐらいであれば数百円の宅配料を支払うことで注文購入することが可能だ。ただこれらの通販サイトは大手でも注文すると「実は在庫がない、キャンセルしてよいか」といったパターンも多くあまり信頼ならない。私は任国のオンラインショッピングサイトで洗濯機を注文すると、事前に配達可能と確認を取っていたにも関わらず「実は配達できないエリアだった、〇〇まで取りに来てくれないか」と家から一時間の距離の場所まで取りに来る事を要求されキャンセルしたこともある。
追加預入荷物について
赴任する国によるがスーツケース一個ほどの重さを追加分として預け入れると2万ほど追加料金が掛かる。ボストンバックにパンパンに荷物を詰め追加料金を払って持ち込むことは選択肢の一つでおススメだ。スーツケース三つだと帰国時に再度追加料金を払わないといけないし、ボストンバックならスーツケースに収納可能だ。多くの国において国際郵送で電子レンジほどの大きな箱を輸送すると2万ほど掛かる。税関の手続きも非常に面倒なので、最初に2万を払ってでもボストンバック一個分の荷物を持ち込むのは大きなメリットになる。私見になるが、うどんやラーメンなどの乾麺、チャーハンやかに玉の素など現地では決して買えない、日本おなじみの味でかさばらない食糧品を持ち込むと良い。現地でレストランにいったり、現地日本食屋で食材を買うより圧倒的に節約しつつ日本の味を楽しめることが出来る。調味料系は包装を剥がして袋だけをバッグやケースに入れて一つでも多く任国に持ち込んで欲しい。