人物面接⇒ある程度プライベートまで踏み込まれる
技術面接⇒自身の知識やスキルを案件と結び付けて回答出来るような準備を
前記事で書いた二次選考の面接について当記事では掘り下げてみる。協力隊の案件には色々な職種があるが、例年面接で問われる内容はそう変わらない傾向にある。この記事をアップロードする24年11月は第一次選考の結果が通知される時期であり、この選考に通過した方は25年の1月にオンラインで面接を受ける事になる。面接で問われた内容は様々なブログで書かれているが、多くのブログに目を通すのは骨折りなのでここでは私が知り得た面接での質問を可能な限り記載する。長文になるが、これから面接を受ける方の参考になれば幸いだ。
人物面接
「志望動機を教えて下さい」
これはほぼ面接の最初で聞かれると思って良い。一次選考に書いた志望動機を簡略化した内容を面接官に伝えれば問題ない。
「家族(配偶者含む)の理解は得られているか」
この質問もほぼ聞かれる。隊員が派遣される国や地域はインフラや治安が日本と比べ悪く、そういった場所に派遣される志願者を心配する家族は多い。結婚している場合は尚更である。家族の全員が協力隊参加を応援しているとは限らないし、本当の事を話しても良いが突っ込まれる可能性があるため「何故自分が協力隊に参加したいかを丁寧に説明して理解を得ている」などと無難な回答をしておくべきだろう。
「職場の理解はどうか(現職参加の場合)」
現職参加の場合はもちろん聞かれるし、現在在職中の方も聞かれる。現職参加の場合はそもそも職場の許可が無いと一次選考に応募出来ないので「職場の理解は得られているし、応援して頂いている」などと答えれば良い。問題は在職中に応募する方で、中には職場には応募を伝えずに選考に進んでいる方もいるだろう。もし選考に落ちればそのまま働き、受かれば訓練開始前に退職するというパターンだ。選考に受かれば退職するが、落ちればそのまま働きますなどと職場に伝えるのは気が引けるし言いたくない方も多いだろう。「もともと〇年△月に退職する予定でそれは職場に伝えている。もし選考に落ちてしまった場合は次のキャリアは考え直すつもりです」などと当たり障りのない回答が良いだろう。面接で伝えた意思をJICA側が職場に連絡する事はまずないので安心してよい。
「ストレス解消法は何か」
この質問も多くの志願者が聞かれている。無難なのが派遣される国でも楽しめるような趣味を伝える事だ。例えば温泉巡り、サーフィン、ドライブといった趣味は協力隊が派遣される国では楽しむ事が出来ない。このような趣味を伝えると間違いなく「その趣味は任国では難しいが、ストレス対処はどうするつもりか」と返される。筋トレやネットフィリックス、スポーツ鑑賞などであれば途上国でもなんとか出来るのでそういった内容を伝えると良い。必ずしも自分の一番好きな趣味を話す必要はない。
「現地人と上手く仕事が出来ないトラブルがあった場合はどう対処するか」
途上国で隊員として働くと現地人と折り合わない場面は必ず出てくる。そういった場面に出くわした場合にどのように乗り越えるかを問われる。違う国に住む人々は性格、文化、社会的背景など日本と全く異なる事が多く、隊員の多くは「何故自分の言っている事、やろうとしている事が理解できないのか」と感じる。「上から目線にならず、意見や理解が自分と異なっているのであればまず相手を尊重し、相手を理解する事を忘れないようにしたい。自分の意見の押し付けは衝突を生む可能性がある事を理解し、折り合いをつけて仕事をしたい」といった回答が無難なところだろうか。ちなみにこの質問と回答は私が聞かれ答えた内容だが、必ずしもこれが正解とは限らないので自分なりの意見を伝えれるように準備しておくと良い。この手の質問は自分の経歴ややりたい事、成し遂げたい事と違って答えづらい人が多いだろう。「どのような人が苦手ですか。派遣先でそのような人ばかりだったらどうしますか」などと質問を少し変えて聞かれる事もあるため、どのように仕事や人間関係を上手くやっていこうとしているのかをまとめておくべきだ。
「国際協力ボランティアは他の機関も募集しているが、何故JICAを選んだか」
国際NGOではJICA協力隊に近い案件を募っている事もあり、国際協力の道で働く選択肢は多様化している。その中で何故JICAを選んだかを問う質問だ。JICAに社会的信用がある事、語学訓練や派遣中の健康管理支援など他のボランティアにはない支援があるため、そのような理由を結び付けたり、自分なりの考えを伝えると良い。第二次選考に第一志望で進んでいる方にとっては「この案件が正に自分のやってみたい事とマッチしていた」などと言えば問題ない。
「隊員としての生活費支給は国によるが多くはない。収入減についてどう思うか」
派遣国によるが隊員に支給される額は生活費、家賃、国内手当を全て合わせて15万ほどである(国による)。有給現職参加の隊員はかなり少なく、ほとんどの人が収入減となる。二年間の収入減の総額は日本や海外で働く場合と比べて数百万となる可能性もある。協力隊として働きたい理由が収入が減ってしまうデメリットを上回るから応募しているはずなので、自分なりの回答を練っておく必要がある。
「協力隊の二年間を終えた後のキャリアはどう考えているか」
JICAは協力隊員にしきりに「帰国後は何らかの形で社会還元して欲しい」と謳っている。帰国後に学校や協力隊事業の説明会でプレゼンテーションしたり、国際協力の道に進む方は一定数いるが、多くはない。むしろ帰国後の社会還元なんて全く興味の無い人が大多数なのだが、JICAの方針故に「社会還元に全く興味は無いので二年間で得た語学力とその経験で収入の高い仕事に就きたい」などと話してしまうのは良くない。帰国後に普通に就職し、所得税や住民税を払う事が何よりの社会還元ではと筆者は考えているが、本心で無くても取り繕った回答を考えておくべきである。
「自身の長所と短所はどんなところか」
一般的な就職面接でも聞かれる内容だ。この質問では長所をどう案件に生かすかより、自分の短所を派遣国でどう付き合って乗り切るのかを突っつかれるパターンが多い。私もこの質問を受けたが「ストレスが溜まると食べ過ぎてしまう傾向にあり、これまで大きな体重変動を繰り返して来た。協力隊のために健康な食生活や運動を心がけてきたので任国では時折旅行などでストレスをため込まないようにしたい」と答えた記憶がある。
「あなたにとってボランティアとは」
グーグルなどの検査エンジンで調べると色々な定義や考え方が出てくる。この質問に対する決まった回答は無いので、自身の考え方や思いを事前にまとめておくと良いだろう。
技術面接
この面接ではそれぞれの職種によって質問内容が異なるため、私のコネクションでは全ての職種において聞かれた内容を網羅する事が出来なかった。しかしながら聞かれる内容は自身の職務経歴となぜ希望する案件を選んだかを中心に展開される。
「これまでの経歴と仕事内容を説明してください」
職務経験がある方はそれぞれの経歴を簡易にまとめて伝えれば良いし、大学連携などの派遣で実務経験がない方は大学で学んできた事を伝えれば良い。ボランティア経験がある方はその事も合わせて伝えれば良いだろう。この質問に対しての答えは長くなりがちだが、面接時間はおよそ10-15分なので長すぎても良くない。1分ほどで相手がその場で覚えれる程度の内容で問題ない。面接官は応募者のデータを当然持っているので、職務経歴書に書いた内容と違う事を話す必要はない。
「何故〇〇の案件を選んだのか」
専門職案件(自動車整備や医療系、教職など)であれば比較的答えやすいだろうが、コミュニティ開発や青少年教育は案件に記載されている業務内容と応募者の学歴や職務経験が必ずしも合致しない場合がある。「この案件で働いてみたい」という意欲だけでなく、自分がその案件に求められる能力がある事を示す必要がある。志望動機にこの事は書いているはずなのでその内容に沿った回答で良い。
「あなたには〇〇の案件も向いていそうだが、希望案件以外での派遣はどうか」
これは私が実際に聞かれた質問で、他の隊員も聞かれている。私は看護師案件で応募したのだが、技術面接で希望国、希望案件に全く書いていない障碍者向けの義肢・義足の案件はどうかと聞かれた。リハビリテーションに関する知識はあったが、義肢義足に関する知識はほぼゼロだったのではっきりと「その案件はサイトで見たが、私の能力では派遣先に貢献出来ないと考えています」と断わりそれ以上は掘り下げられなかった。コミュニティ開発などの専門知識が必ず求められない案件では、希望する案件以外でも協力隊に何が何でも参加したいという方のみ「能力が足りるのであればおっしゃっているように希望とは異なる案件でも派遣されても良いと考えています」などと回答すれば良い。JICAの二次選考は倍率が思ったより高く、一次選考で10人合格⇒二次選考合格者ゼロといった場合もある。この希望する案件(派遣国)と異なる派遣を了承するかは結構な数の隊員が聞かれているようなのでしっかりと自分の意見をまとめておいた方が良い。
「あなたの経歴や能力をどのように案件で生かして行きたいか」
質問の仕方は少し違えど、どのような案件でもこの内容は必ず聞かれるといって良い。二次選考での面接に進む前にどの案件で面接を受けるのかは分かっているので、案件の要請内容や可能であればその国の情報も調べて置き、案件でどのような課題があるのか、それに対してどのように活動して行きたいのかを伝える必要がある。
この記事は私が新たな情報を掴んだ時点で随時追記していこうと考えている。もしこの記事に目を通して頂いたならこの記事のURLをブックマークに登録頂ければ幸いだ。人物・技術面接共に共通するのが応募者の隅をつつくような回答に困るような質問が多い事だ。上記に挙げた「苦手な人はどのような人か、派遣先でそのような人が上司だったらどうするか」と聞かれ「ストレスを貯めたくないので可能な限り接する機会を少なくします」などと本心を伝えてしまうと選考に落ちる事は日を見るよりも明らかである。自分は困難があっても乗り越えれる、派遣先に貢献出来る人だという事を伝えなければならない。人によっては技術面接で聞かれるであろう専門的な内容を人物面接で問われる場合もあるようなので、原稿に書いて覚えるまではしなくてもこの質問に対してはこの回答、とワードなどでまとめておくと頭の中が整理されて落ち着いて面接に臨めるだろう。突拍子もない質問を圧迫面接の雰囲気でされてしまう事も想定して準備をする事をお勧めする。