JICAは良くも悪くも活動には無関心

活動編

・定期報告以外は事務所と関わる機会は少ない
・活動以外には口うるさい

これまでの記事では応募の流れや実際、隊員応募しようとしている人に向けての記事を中心に書いてきた。ここからしばらくは活動の実際とJICAのルールについてアップロードしていく予定だ。当面の間は活動の実際に関する記事を中心にする予定で、JICA公式ブログやわずかに存在する華やかな活動をする隊員のSNSなどでは語られない生々しい情報をお届けしていこうと思う。

私はアフリカで二年間隊員として活動したが、活動について私が思っていたよりJICA側と関わる事は無かった。隊員に対するサポート体制はホームページなどに書かれているが、実際はどうだったのか振り返りたい。

赴任直後

任国に到着して一カ月ほどは首都にあるホテル(国によってはドミトリー)に滞在しながらJICA事務所や語学学校に通う日々になる。この期間はほぼ毎日JICA職員と顔を合わせるが、非常に親切にして頂いた。電子決済の方法やモバイルバンクアプリの使い方など、調べても情報が見つからない事を色々と教えて頂いた記憶がある。この時は右も左も分からない状況なので、職員にお勧めの買い物場所を聞いたり、安全担当の方に治安の悪い場所や賄賂を要求されたときの対処方法など、根掘り葉掘り聞いたものだ。この時は多くの隊員がJICA事務所に良い印象を持つ。

活動中

赴任先で活動を始めた後はJICA事務所・スタッフと連絡を取る事はかなり少なくなる。二年間の内、レポートの提出は計5回あり、JICA事務所と赴任先での発表はそれぞれ2回だ。時折VC(企画調整員:簡単に言うと隊員の世話役兼上司)から「調子はどうですか」という電話があったが、活動後期は事務的なやり取りしかせず、活動先での状況を聞かれる事は一年で数回ほどだった。JICA事務所は赴任先と定期的に連絡は取っておらず、私は体調不良で無断で一カ月ほど休んだ事があるが一切JICA事務所や赴任先から連絡は来なかった。JICA事務所の考え方として「二年間を健康かつ安全に過ごす事が出来れば活動先での結果が出なくても構わない」というものがある。報告書に「活動の理解が得られず苦戦している」などと書いて提出してもVCが具体的に相談に乗ってくれる事もない。隊員が病気に掛からずに過ごしていれば活動がどうだろうが事務所はどうだって良いのである。10人中1人ぐらいの割合で専門家と呼ばれるスタッフが隊員の職場を訪れ色々な活動をする事があるが、一過性の物でほとんどは1-2週間ほど一緒に活動して終わりである。例えば体育教育の機会を持たない女生徒にスポーツの楽しさを知って貰おう、という活動でジェンダー関連の専門家がある教員隊員の学校に1週間ほど滞在した。この専門家はプロのカメラマンを日本から2人連れて来て、平日の間学校で数時間ほど活動し、毎日の活動が終わった後は1時間ほど離れた大きな町の良いホテルに滞在していたそうだ。この教員隊員は体育を教えており、学校に予算が無かったため事務所に数千円ほどスポーツ用品を購入する資金提供を依頼していた。現地業務費と言われ、複雑な手続きの割には申請が通る割合が低くこの隊員の申請も事前に拒否されていたのだが、いざ専門家が来ると「予算はあるから何でも欲しいものを言ってね」と隊員に言い、実際にサッカーボールなどの用品を購入した。その活動の様子をテレビカメラで収録したようだが、そもそもサッカーのルールすら知らない、かつ体育の概念が存在しない学校で女学生にサッカーを教えてもそれが本当の「体育の楽しさに触れる」機会になったのかどうか怪しいものである。しかし専門家にとっては隊員と共に活動した軌跡をカメラに収めるだけで十分なのだろう。

安全関連

しかしながら安全に関わる物事についてJICAは口うるさくなる。例えば隊員が赴任先の町から離れる際に移動届という書類を移動する日から数えて三日前に提出しなければいけない。これはどこへ、何のために、何時に、何で移動する、という情報を詳しく記載する必要があり少しでも不備があると「ここがちょっとおかしくないか」とJICA事務所から連絡が来る。任国外旅行についても同様で配属先と事務所両方から許可が必要になり、旅行先にJICA事務所があるとその事務所に自ら連絡と承認を取る必要がある国があるなど、手間が掛かる。ラマダンの時期にはイスラム圏の渡航が不可になるし、イスラエル-パレスチナ情勢が不安定になった時期はイスラエル周辺の国への渡航が不可になるなど隊員にとってリスクになる事を避けるように通達がある。個人的にやりすぎだと思ったのが、僻地に赴任している隊員が土日に隣町に買い物に行くときすら移動届が必要だったこと。土曜日にバスで30分の隣町にあるスーパーへ買い物に行こうとすると水曜日に移動届を提出する必要がある。もし移動届を提出せずに土曜日に買い物に行き、トラブルに巻き込まれたとなると「なぜ移動届を出さずに出かけた」という面倒なお叱りをJICAから受けることになるが、やり取りの面倒くささから隣町程度の短距離の移動であれば移動届を出さない隊員が私を含めて多かったのが実情だ。VCは隊員の住む地域の事を当然詳しく知っていないので、例えば一番家に近い商店まで片道30分ほど徒歩で掛かろうとも「バイクタクシーは乗るな」と通達がある。体調不良の時や重たい荷物を運ぶ時ですらバイクタクシーを許可していなかったので一部の隊員は黙ってバイクタクシーを利用していた。

健康管理

一方で健康に関するサポートは基本的に手厚い。体調を崩した際はすぐに連絡するように言われていたが、実際に連絡するとどこで受診すれば良いか教えてくれたし、受診費用も一旦建て替える必要があるが受診代、薬剤費は基本的に全額返ってくる。歯科受診に関しては3割負担となり、既往症に関する費用は一部自己負担が必要な場合があるので注意が必要だ。僻地での受診が困難な場合は首都のホテルに滞在し大病院で受診することもある。この場合の費用も基本的に保険会社持ちだ。病院にはかからない事が一番だが、健康面のサポートに関しては特に心配する必要はないだろう。なおこの健康管理については別記事を書く予定にて良ければそちらも参考頂きたい。

帰国後

日本に帰った後はあっさりしている。帰国直後に健康診断を行い、郵送で公用パスポートを返却し預け入れていたパスポートと感謝状(二年間完走した場合のみ)を受け取ってからはJICA側と公式に関わる機会はなくなる。以降は現職復帰、就職活動、大学院進学などそれぞれの道を歩む事になるが、JICAが関わるのは就職活動のみ。パートナーという隊員経験者のみが利用できる求人サイトを利用する際や一般の就活時に隊員として活動した証明書の発行を依頼するぐらいだ。

この活動には基本的にJICAは活動に介入しないというのは良し悪しであり、明確なノルマを達成しなければならない重圧こそ無くても、目標を見失い活動にやりがいを見いだせない隊員は決して少なくない。旅行関係など制約が多く厳しいのはいかにもお役所仕事の感じだが、政府の税金で運営している組織故に仕方ないのかもしれない。当記事のそれぞれの項目は別記事でも詳しく紹介しているのでよければご覧頂きたい。

タイトルとURLをコピーしました